World Coffee Research, Good Practice Guide: Coffee Nursery Management
モジュール4:無性生殖
World Coffee Research, Good Practice Guide: Coffee Nursery Management
モジュール4:無性生殖
このページの記事は、World Coffee Research (WCR) の許可を得て、東村珈琲産業振興地域協議会がGood Practice Guide: Coffee Nursery Managementの一部を翻訳したものです。ただし、翻訳文の正確性その他についてWCRによる審査や承認は受けておりません。
また,このページの挿画は Google Gemini で生成したもので,WCRの原本には含まれておりません。
良質な苗を得るには、各生育段階の植物の要求に合った栄養管理が不可欠です。育苗場では、培地(基質)の養分分析を行い、必要に応じて肥料の配合で栄養の不足を補うことが推奨されます。
認証を受けた供給業者から肥料を購入する
品種や培地の栄養要求に合わせて施肥する
植物の生育段階に合わせて施肥する
コーヒー苗の生育不良
栄養欠乏による病害リスクの上昇
成木になってからの生産性の問題、および害虫への感受性の増大
枯死につながりうる薬害(毒性障害)
適切な栄養のほかにも、植物による養分吸収に深く関わる要因がいくつかあります。
水素イオン指数(pH)は、培地の酸性(低pH=酸性)またはアルカリ性(高pH=塩基性・アルカリ性)を示す指標です。pHは植物の養分吸収に関わる化学反応を左右し、養分が吸収可能か(可溶性か不溶性か)を決めます。このため、作物で最も多い栄養障害は、pHが適正範囲を外れたときに起こります。植物に必要な養分をすべて与えても、pHが適正範囲外であれば、吸収はほぼ不可能になります。
強酸性の環境では、窒素・カリウム・カルシウム・マグネシウムの欠乏が起こることがあります。高pH(アルカリ性)の環境では、鉄・リン・マンガン・亜鉛・銅の溶解度が低下することがあります。
コーヒーの推奨pH範囲は 5.4〜6.8 です。
測定前に、pHメーターが適切に校正されていることを確認します。測定は、圃場容水量の状態(湿りすぎでも乾きすぎでもない)の培地で行います。
手順
同一ロットの培地から複数のサンプルを採取する。容器の上から下まで全層にわたって培地を取り、均等に採取する。
サンプルを容器の中で均一に混ぜる。
採取は施肥前に行うか、混合物から肥料粒をすべて取り除く。
ビーカーに培地20 gを量り取る。
蒸留水50 mlを加える。
よく混ぜ、30分間静置する。
再度混ぜ、ビーカーの溶液を直接pHメーターで測定する。
すべての情報(日付、採取場所、作業者、ロット、容器)を記録する。
電気伝導度は、培地中の可溶性塩類の濃度を表します。つまり、電気伝導度が高いほど塩類濃度も高くなります。培地のECは低いほうが望ましく、0.5 mS未満が理想です。コーヒーでは 0.5〜3 mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)が正常とされます。ECが低いと施肥管理がしやすく、作物の薬害(植物毒性)の問題も避けやすくなります。ECによって、農家は培地の塩分濃度を判断できます。ECが高いほど、培地中に含まれる成分が多いことを意味します。
測定前に、電気伝導度計が適切に校正されていることを確認します。測定は、圃場容水量の状態(湿りすぎでも乾きすぎでもない)の培地で行います。
💡
圃場でのデータ収集は複雑になりうるため、訓練を受けた丁寧な担当者が必要です。圃場でのサンプリングに不安がある場合は、検査機関を利用してください。
手順
同一ロットの培地から複数のサンプルを採取する。容器の上から下まで全層にわたって培地を取り、均等に採取する。
サンプルを容器の中で均一に混ぜる。
採取は施肥前に行うか、混合物から肥料粒をすべて取り除く。
ビーカーに培地100 mlを量り取る。
蒸留水150 mlを加える。
30分間混ぜる。
コーヒーフィルターをセットしたろうとで溶液をろ過する。
ろ過した溶液を、ビーカー内で直接、電気伝導度計で測定する。
すべての情報(日付、採取場所、作業者、ロット、容器)を記録する。
注: 一般に、伝導度の高いサンプルはpHが低い傾向があります。
💡
1日に複数のサンプルを測定する場合は、測定のたびにpHメーターと電気伝導度計を蒸留水ですすいでください。問題を早期に把握するため、少なくとも2週間ごと、または月1回はサンプリングを行ってください。
コーヒーが栄養面で最大の生産ポテンシャルに達するには、複数の養分が必要です。コーヒー植物の多量要素は、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)です。
N
(窒素)
コーヒーにとって最も重要な要素で、特に栄養成長、新梢の伸長、緑色の維持に関わる。
P
(リン)
良好な根の発達を促し、植物の健全性を支える。
K
(カリウム)
組織を硬くする(組織の強化)うえで重要な役割を果たす。
Ca
(カルシウム)
根と細胞壁の発達に大きく関わる。
Mg
(マグネシウム)
光合成と植物の発達に大きく関わる。
S
(硫黄)
葉緑素(クロロフィル)の生成に不可欠。
苗の生育に合わせて育苗場を維持するための管理計画例は、次に示します。
コーヒーで重要な微量要素は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、塩素(Cl)、モリブデン(Mo)です。
多くのコーヒー用肥料には微量要素が含まれていますが、必要量はごくわずかです。
植物が最適に生育するには、養分が吸収され、適切な比率で体内に分配される必要があります。この栄養バランスを維持することで、土壌中の養分間の相乗作用や拮抗作用が生じたり、強まったりすることがあります。ある養分が過剰になると、別の養分の不足を招くことがあります。
コーヒー苗の幼若期に、栄養欠乏がどの部位に現れるかを示しています。
以下の症状は、薬害(中毒症状)、害虫、病害によっても起こりうる点に注意してください。そのため、欠乏対策の施肥を行う前に、外的な原因がないかをまず確認することが重要です。
症状:
成葉の黄化(クロロシス)、または全体的な黄色化
栄養成長の低下
落葉が起こる場合がある
葉緑素含量の減少
症状:
生育が遅い
根の発達が悪い
葉が小さい
症状:
栄養成長の低下
葉脈間に、光に透かすと見える黄色い斑点
症状:
若葉の縁のクロロシス(縁の黄化)
葉が波打つ
先端の壊死(ネクロシス)と変形
全体が淡い緑色になる
症状:
変形
サイズの縮小
伸長(徒長)
中央脈と側脈の黄化
症状:
新葉のクロロシス(葉脈を除く)
葉の縮小
節間の短縮
葉が内側に巻く
小さく細く淡い色の葉
葉の表面がざらつき、しわが寄る
薬害は、育苗場での生産工程のあらゆる段階で起こりえます。そのため、施肥を慎重に管理し、pHとECを適正な水準に保つことが重要です。
苗は肥料による薬害に非常に敏感です。濃度が非常に高いと、苗が枯死することもあります。
枯死に至らない場合でも、薬害によって生育が止まったり、場合によっては葉が黄変・落葉したりします。通常これは、pHが低い、またはECが上昇していて、養分の吸収が妨げられていることが原因です。この場合は、培地を水で洗い流して過剰な養分を排出する、および/または石灰を使ってpHを上げます。糖蜜の灌注処理(根元への灌水)やアミノ酸の葉面散布は、植物の回復を助けます。植物が回復するまでの間は、土壌への施肥をしばらく中止することが推奨されます。
土壌改良資材は一般に、表土を主体とする培地や手作りの配合培地を使う場合に、培地の酸性を下げ、一部の病原菌を抑えるために施用します。培地を使用する前の、消毒後に添加します。
液状の土壌改良資材は、灌注処理(根元への液体灌水)で施用することもでき、労力を削減できます。
市場には幅広い肥料があり、土壌施肥用、水溶性、葉面散布用に分類できます。
土壌施肥用肥料: 物理的配合(効率は劣る)、または化学的配合(速効性または緩効性)があります。緩効性肥料は、植物による養分の利用率を高め、溶脱を防ぎ、土壌の酸性化を抑えます。
水溶性肥料: 液体または可溶性粉末です。水溶性肥料の多くは酸性反応を示す(たとえば硝酸カルシウムは例外)ため、適切な量で使用する必要があります。
葉面散布用肥料: 塩類や酸化物、合成キレート、アミノ酸の形で供給できます。このうちアミノ酸が、植物の吸収に最も効率的です。
この段階では、接ぎ木の穂木または台木用の発芽苗を得ます。生育可能な苗の発芽には40〜60日かかります。栄養面と防除面の推奨事項を以下に示します。発芽期の施肥方法は多数あります。そのため、農学の専門家に相談し、苗の健全性のために育苗計画を継続的に評価し、調整・変更するのが最善です。
【根】土壌施肥
施肥:なし(EC < 1 mS)
頻度:なし
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:(NPK+微量要素[ME])、蝶形期(バタフライ期)から開始
頻度:週1回
【葉】防除葉面散布計画
施用:発芽段階から殺菌剤を散布
頻度:週1回
【根】土壌施肥
施肥:なし(EC < 0.5 mS)
頻度:なし
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:(NPK+ME)、蝶形期から開始
頻度:[訳注※]
【葉】防除葉面散布計画
施用:発芽期から苗期の間に殺菌剤を散布
頻度:週2回
[訳注※]この部分原文が誤記載
【根】土壌施肥
施肥:なし(EC < 0.3 mS)
頻度:なし
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:なし
頻度:なし
【葉】防除葉面散布計画
施用:苗期に殺菌剤を散布
頻度:1回のみ
順化には通常4〜8週間かかり、気象条件と苗の管理によって変わります。
栄養面と防除面の推奨事項を以下に示します。接ぎ木苗の順化の方法は多数あります。そのため、農学の専門家に相談し、苗の健全性のために育苗計画を継続的に評価し、調整・変更するのが最善です。
【根】土壌施肥
施肥:緩効性肥料[注1](3〜5 g/L)+水溶性肥料 NPK+ME(1.4〜2.0 mS)
頻度:緩効性肥料は培地の混合時に1回のみ使用。水溶性肥料は第5〜8週に週1回
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:週2回
【葉】防除葉面散布計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤
頻度:週2回
[注1]緩効性肥料の配合例:15-9-12、14-14-14。配合は国によって異なります。類似の配合も使用できます。
【根】土壌施肥
施肥:培地に緩効性肥料を混合(3〜5 g/L)
頻度:培地の混合時に1回のみ使用
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:週1回
【葉】防除葉面散布計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤
頻度:週1回
【根】土壌施肥
施肥:水溶性肥料 NPK+ME(1.4〜2.0 mS)
頻度:水溶性肥料を第5〜8週に週1回
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:2週間ごと
【葉】防除葉面散布計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤
頻度:2週間ごと
発芽後、苗はベッド、トレイ、培地ブロックから、チューベット(tubette)またはポットバッグへ移植され、のちに圃場へ定植されるまでそこで育ちます。この段階では、苗が健全に速く育つのに必要な条件を整える必要があります。
維持管理段階に苗が留まる期間は、植物の需要と顧客が求めるサイズによって決まります。栄養面と防除面の推奨事項を以下に示します。植物の管理方法は多数あります。そのため、育苗場について農学の専門家に相談し、植物の健全性を継続的に評価し、計画を調整・変更するのが最善です。
💡
肥料の散播(ばらまき)は推奨されません。施肥が不均一になり、ある植物には薬害を、別の植物には欠乏を引き起こすおそれがあるためです。
【根】土壌施肥
施肥:培地に混合した緩効性肥料(3〜5 g/L)+水溶性 NPK+ME(1.6〜2.5 mS)
頻度:緩効性肥料は混合時に1回のみ使用。水溶性肥料は、移植の3〜4週間後から10〜15日ごと
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:週1回
【葉】防除葉面散布計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤
頻度:週1回
【根】土壌施肥
施肥:緩効性肥料(3〜5 g/株)+培地への石灰添加+粒状肥料18-46-0(希釈)
頻度:3つとも培地に混合し、1回のみ
【葉】栄養施用計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:2週間ごと
【葉】防除施用計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤
頻度:2週間ごと
【根】土壌施肥
施肥:定植後に土壌施肥用肥料を施用(3〜5 g/株)+粒状肥料18-46-0(希釈)
頻度:両方を培地に混合し、1回のみ
【葉】栄養葉面散布計画
施肥:栄養施肥(NPK+ME)
頻度:2週間ごと
【葉】防除葉面散布計画
施用:殺菌剤/殺細菌剤を1種
頻度:30日ごと
💡
注意: これらの配合は、培地の分析結果と各品種の要求に基づいて適用する必要があります。
💡
防除管理は、育苗場の毎日の点検により問題を早期に発見し、局所的に対処することが基本です。
養分の吸収を確保するため、コーヒーの推奨pH範囲(5.4〜6.8)で肥料を施用する
電気伝導度は 0.5〜3 mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)に保つ
培地の化学分析を行い、施肥を調整する
認証を受けた供給業者の肥料を使用する
品種ごとの栄養要求に合わせて施肥する
苗の生育段階に合わせて肥料を施用する
薬害の有無を毎日確認する
苗床の病害虫(防除上の問題)と、薬害の可能性を毎日確認する